【ネタバレ注意】映画「君の名は」の「むすびの神様」の考察

映画「君の名は」に関する考察です。
 
かなりネタバレですので、まだ見てない方や、
 
「君の名は」を純粋なラブストーリーとして
 
留めて置きたい方は読まないでください。
 
ここでは「君の名は」のヒロイン三葉ちゃんの
祖母である一葉さんが口にした
「むすびの神様」の能力や存在について
可能性を検討していきます。
 
まず、むすびの神様ができたことと、
できない事を整理します。
 
◆むすびの神様ができた事
・時を超えた入れ替え(世代毎に)
・記憶の消去
・日記アプリの消去
・瀧くん(+ペン、組紐)の過去移動
 
◆できない事
・災害を音声・映像・記憶で伝えること
・彗星の軌道をずらしたり、隕石の発生を抑えること
 
それでは一つずつ深堀していきましょう
 
なお、現代科学で確実に分かっている事はできるだけ外さず、
確実に分かっていない面については、遠慮なく、
あくまで可能性として最大限に妄想するスタンスで書いていきます。
 
また、劇中の演出的な部分に対しても、取り上げてわざわざ考察しているので、
この辺はご愛嬌と言う事でご容赦ください。
 

◆時を超えた入れ替わり
まず体が入れ替わるとはどういう事か、
記憶の観点で言うと三葉ちゃんの体で、
瀧君の記憶を思い出す事が出来ること、
そしてその逆もしかりです。
 
入れ替わった先で自分の方言であったり習慣を思い出していましたね。
逆に入れ替わった時に相手の記憶にはアクセスできていません。
(相手の名前が分からないなど)
 
これが達成される背景は二通り考えられます。
 
一つ、記憶は脳に蓄えられると言う一般常識、
この場合、入れ替わりの際、お互いの脳細胞の組成が変化し
相手の脳に自分の記憶が書き換えられます。
 
もう一つのケースは、脳は別な次元に保管される記憶に
アクセスしていると言う場合です。
この場合だと、入れ替わる二人の脳内を書き換えなくとも、
脳の参照先を入れ替えるだけで身体を入れ替える事ができます。
 
<長い脱線:意識と記憶はどこにあるのか>
後者に対してちょっと長く脱線するので、嫌な人は次の章まで飛ばしてください。
 
記憶に限らず、意識自体もですが、幾ら複雑とは言え、
原子の集まりが感情を抱いたり、イメージを描いたりと言うのは
とても不思議に思いませんか?
 
そこら辺の石ころや空気や土の、原子の並びが変わって
生物の組成になると感情を抱いたりイメージを描いたりするのです。
 
しかも脳は脳細胞の集まりで、認知心理学では一つ一つの細胞には、
丸とか三角とか単純な形でしか認識をすることができないと
されています
 
もし仮に脳だけで記憶や思考が形成されたとすると、
いずれかの脳細胞に意識を生成する機能があり、
かつ、それぞれの脳細胞の連携の結果、
意識上で思ったり考えたりができる事になります。
 
一方、世の中にはパンサイキズムと言う考え方があり、
これは元々そこら中の物質には予め意識が宿っていると言う考え方です。
 
この場合、脳細胞は意識を生成する必要はなく、
脳細胞の活動の結果が意識に反映されるのである意味シンプルです。
 
元々意識が宿っていると言うのも、そもそも違う次元に
意識の次元があると考えると若干考えやすい?でしょうか。
 
劇中では、二人の入れ替わりは時を超えて起きていました。
また、劇中に流れる曲「夢灯籠」の歌詞に5次元と言うワードが出てきました。
※これは他の解説サイトでもよく取り上げられてます
 
5次元の中に時間の軸がある場合、その世界の住人はでは過去も未来も
移動できるとすることができます。
 
つまり元々意識も記憶も五次元の世界にあって、
むすびの神様は私たちの世界と5次元の世界の結びつきを
入れ替えたと妄想する事が出来ます。
 
なお、「ディメンションW」と言うSF漫画でも違う次元に
記憶や可能性が保存されていると言う設定があり、
これを元に色んな超常現象を描いていてとても面白いので
読んでみてください。
 
◆記憶の消去
これももし記憶が脳内にあるとすると、むすびの神様は脳内の組成を
物理的に変形して、記憶の構成を消去、または思い出せなくする必要があります。
 
一方、記憶が別な次元に保管されている場合は、特定の記憶にだけ
アクセスできなくすれば良い事となります。
 
ちなみに、もっと中二病的な解釈をするならば、
常世界の理に背いて発生した記憶が矛盾を解消するために
消えていったと考えることも出来ます
 
◆日記アプリの消去
これは結構頭を悩めました。
 
現象としてまず、目の前で日記アプリが文字化けを起こします。
次に日記一覧の画面で日記が消えていきます。
最後に、日記が無い事の表示と、アカウント作成のリンクが現れます。
 
アカウント作成のリンクがあると言う事はクラウドサーバと
連携した日記アプリと見れるでしょう。
 
この一連の現象に対しむすびの神様がちょっかい出来そうなポイントは
瀧君の意識、スマホのデータ、スマホクラウドサーバの通信、
クラウドサーバ、クラウドサーバの従業員あたりです。
 
文字化けを起こしたと言う事はスマホ上のデータを破壊し
それがディスプレイに表示されたたと言う事です。(あんなランダムに・・・)
また、今回クラウドサーバと連携したアプリなので
クラウド上のデータも消さねばなりません。
 
もし神様が霊的な力でハッキングしたとすると、
(記憶装置に対して電磁的に作用とか)
スマホ上のデータを無造作に破壊し、
その後日記の一覧をアプリの機能を使って
削除したような流れです。
 
またはクラウド上のデータを直接無造作に破壊しつつ、
スマホアプリとリアルタイムで同期・・・・
これは無くはないけどリアルタイム性が求められない
日記アプリでこういう作りにはあまりしないでしょう
 
むすびの神様が瀧君の記憶や意識を改変し、
元々日記なんて書いてなかったと言う線もあるのですが、
だったら最初からアプリもインストールすることなかったんじゃ?
と思ってしまいます。
 
このデータが消えたタイミングと言うのが、
隕石落下後の糸守で、自分の記憶と現実のギャップに
気が付いたタイミングでした。
 
そのため、さっきも書いた、現実世界の理との矛盾を
是正する方向へ力が働いたと言う妄想もできます。
 
ちなみに、入れ替わりに関する日記だけじゃなく、
全日記の消去なんですよね・・・
特定のデータに対してと言うよりは、もっとおおざっぱなやり方ですね。
※ここはあくまで演出色が強い所だとは思います。
 
◆瀧くん(+ペン、組紐)の過去移動
最後の入れ替わりの時、御神体のあるクレーターの淵で
隕石落下前の三葉ちゃんとその3年後の世界の瀧君が
物理的に接する事が出来ています。
 
その時の糸守湖の形は隕石落下前。
 
また、瀧君が持っていたペンと組紐
三葉ちゃんの元に残ります。
 
つまりタイムワープ?と言えばそうなんですけど、
劇中の冒頭で「世界の輪郭がぼやける」時間と言うので
片割れ時限定で物理的にも時の流れを切り貼りできた
って事ですかね。
 
このシーンでは組紐の受け渡しも重要なので、
組紐もキーアイテムとして作用したかもしれません。
 
※冒頭で黄昏時を説明してた雪野先生は、
別作品「言の葉の庭」に同姓同名同職業の人が
出てくるので要チェックですw
 

◆災害を音声・映像・記憶で伝えること
ここからはむすびの神様ができない事を書いていきます。
 
先ほど書いたように、もし5次元の記憶の交換ができたとするならば、
最初から隕石が落ちる前の三葉ちゃんと隕石が落ちてくる時の三葉ちゃんで
入れ替わりをすれば良かったはずです。
 
そもそも交換なんかせず隕石が落ちてくる時の記憶に結び付けるだけで
良かったはずですが、これらの事はやらず、やったのはあくまで入れ替わり。
 
この他、単に音声や映像などで伝える事はやっていません。
 
◆彗星の軌道をずらしたり、隕石の発生を抑えること
   (逆に落下を絞る事は出来る?むしろ意味があって?)
 
もしもむすびの神様が物理的に作用、
つまり粒子に対して力学的エネルギーを作用させられるのだとしたら
ティアマト彗星の軌道を変えて隕石の落下を防げますが
もちろんそんなことはしていません。
 
問題なのは出来ないのか、しないのか
 
出来ない場合、そもそもそんな能力が無い、他、
大質量すぎてキャパオーバーとか、あとは出来るが
他の神様の力が強いなどが考える事が出来ます。
 
また、謎の一つとして何故1200年毎に毎回隕石が、
しかも糸守付近に落下するのかと考えると
隕石落下は必要な事で糸守付近に誘導しているとも
考える事が出来ます。
 
これは瀧君が口噛み酒を飲んだ時に隕石が地球に落下する
映像の続きで受精卵が細胞分裂する映像が流れるので、
もしかしたら隕石落下は必要な営みで、しかし被害を
押さえるべく力を働かせていると考えることも出来ます。
 
◆むすびの神様の力のまとめと結論
ここまで考えられる可能性をいろいろ書いてきましたが、
ポイントとしてむすびの神様は次のどちらか、または両方
と言う事になります。
・物理的に作用できるのか
   (原子に対して力学エネルギーを作用できるか)
・あくまで別次元の領域でのみ力を発揮できるのか
 
また振り返ると神様が自身の能力を最大限発揮したとも
言えないし、明確な意思があるとも言えません。
 
そこでう一つ考えなければならない事があります。
某宇宙SF映画で「彼らじゃない俺たちだ」と言うセリフがあります。
 
超常的な力で人類を助けてくれる存在が居るが、
実はそれは自分達だったと悟った時のセリフです。
 
君の名はにおいても実はむすびの神様という第3の存在がいるのではなく、
あくまで主人公達の力なのでは無いかと言う事も考えられます。
 
これは何故入れ替わったのが三葉ちゃんと瀧君なのかという点と、
宮水神社を中心に行われてきた神事の意味からも考えることができそうです。
 
古代の糸守で隕石が落下し、その時甚大な被害が発生したとして、
生き残った祖先が未来でまた隕石が落下する事を危惧し、
それを回避するためにできる事をしたとしたら何ができるでしょう?
 
一つ、劇中で一葉さんが言っていた「まゆごろうの大火」によって
焼失した古文書には恐らく全てが書き記されていたのでしょう
 
また、口噛み酒や組紐を神事の形で伝統を残し、
これ行う事で宮水家の人間がむすびの神様の力を
利用できるようにしたと考えることができます。
 
それが例えば次のような事です。
・宮水神社の神事を行った者は、自身を救う可能性のある、
   つまりお互いに愛し合う事の出来る異性と入れ替わりを発生させ、
  これによって神事を行った対象者を救う可能性を高める
   →このため思春期以降に発生
・入れ替わりは時を超えて行う事で、入れ替わり対象者が隕石落下による
   被害に気が付く可能性を高める。
・口噛み酒によって入れ替わり対象者からのアクションで
   入れ替わりを発生できるようにする
組紐かつ片割れ時を利用する事で、入れ替わりする者同士が直接会話を
   出来るようにする
・これらの力が悪用されないよう、あくまで神事の中に留まり、
   神事以外での記憶や記録は抹消されるように働く
 
劇中でも、もし瀧君が御神体の事を思い出さなかったら、
もし口噛み酒を飲まなかったらなど、一つ行動を誤るだけで
三葉ちゃん達を救えませんでした。つまり確実性がなかったのです。
 
こう考えると、未来の糸守を守るために確実な慣習を残したと言うより、
未来の糸守が守られるよう出来るだけの慣習を残したと考えることができます。
 
つまりむすびの神様とは、これらをひっくるめた
大きな流れそのものと考える事が出来ます。